年齢と妊娠と出産

「女性の年齢と妊娠率について話す米産婦人科医が増加」

という記事を WSJ 日本語版で読みました。

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323924104578524343555773924.html?id=fb&reflink=fb

「話さない産婦人科医もいるのかー。なんだか意外だな~」

と夫に言ったら、「え?いつも話してもらってた?」と、逆に驚かれました。あまりよく覚えてないんですが、話してもらっていた気がします。ただ、私は2007年夏ぐらいまで子供を欲しいと思っていなかったので、右から左に聞き流してたんじゃないかなと。

でも、そんな患者に対しても、医者はとりあえず情報を与える義務があると思うんですよね。なので患者が逆ギレするのは、お門違い。「あなたは肥満です。このまま肥満が悪化すると、心臓や関節に負担がかかるので、運動しましょう。そして、食生活も改善しましょう」と言うのと同じレベルだと思います。これだって言わない医者もいるらしいですが、それなら何のための検診なのか? 患者との関係が悪くなるのを心配していたら、患者が好む情報しか与えないことになるのでは。

誰もが子供を欲しいと思うわけではないし、誰もが子供を持つべきだとはまったく思いませんが、「女性の体にはタイムリミットがある。それは自分にもあてはまる」ということを、医者は患者本人に伝えて認識を手伝うのがいいと思います。それは妊娠や出産を強制してるわけではなく、オプションを伝えるということなので。

私自身、2007年の夏まで子供は欲しくありませんでした。子供はかわいいけど、そこで終わり。だいたい、自分の今の生活のどこに子供を組み込めるの?あれもできない、これもできない、いろいろできないことが出てくるよ。そういう考えでした。だいたい今の生活に育児を組み込むっていう考え自体が違うよなと、今になって思います。もう一つ想定外だったのは、自分自身が産後にそれまでの生活をしたくなくなり、子供と一緒にいる時間が一番好きになったことです。たまに息抜きは必要ですが、夜にしょっちゅう遊びに行けない、今すぐって連絡されても行けない、そういう「できない」ずくしても、かまわない。だって行きたくないし(笑)。それはやはり私が出産するまで、結婚して12年、交際期間をあわせると15年、夫婦だけの、または自分の時間がたっぷりあって、好きなだけ仕事をして、自分の目的を果たしていたからかなあと思うのですが、どうでしょう?

でも、A さんが産後もそれまでと同じく自分の時間中心で過ごしていても、B さんが子供中心で過ごしていても、A さんも B さんもそれぞれ。A さんがおかしいとか、B さんがおかしいとか、他人があれこれ言うのはおかしい。

あるお母さんが先日、「○○ さんは子供が巣立って、ご主人と2人で旅行したりして、本当に幸せで楽しそうなのが、Facebook の写真を通して伝わってくる。私も後20年がんばれば、これから開放されて、自由になれる。」と言ってました。そういうお母さんもいるんですが、それがおかしいと言うのは、おかしいんですよね。私とは違うけど、人それぞれだから。

で、私が「子供もいいなあ」と思ったのは、2007年の夏に17歳の頃から知っている友人に会いに、スウェーデンに行った時でした。彼女はスウェーデン人で、留学先のオーストラリアで出会いました。それから1年間、近い町に住んでいたこともあって遊びに行ったりし、それぞれ母国に戻ってからも、彼女がシアトルや神戸、ロンドンに会いに来てくれ、うちの実家に1ヶ月ホームステイしたこともありました。そして、パリで夫がサイクリングのイベントに参加していた2007年の夏、私だけで彼女に会いにストックホルムへ。3年ぶりの再会でしたが、昔からかわいかった彼女の息子は、これまた超かわいかった!顔もかわいかったけど、愛嬌があって、人懐こくて、「子供」というものに対してあまり打ち解けられなかった私を解放してくれましたねー。わずか3泊4日でしたが、彼が初めてデイケアに預けられた日に同伴できたり(よくある「アジア人のナニー」と間違えられたけど)、一緒にあちこち観光してもらったりと、貴重な体験をさせてもらいました。ずーっと子連れでの外出で、きっと彼女はとても大変だったと思います。でも、私にとって何が良かったかというと、彼女がめちゃくちゃ自然にお母さんであることに幸せを感じていたことでしょうか。まあその時点でもう20年近く知っている間柄だったからかもしれませんが、何と言うか、誰かに何かを主張したり誇示したりするわけでもなく、強制するわけでもなく、自然でした。自分で満ち足りてる人って、こういう人のことを言うんだなと。前からそうだったけど、すごく優しい雰囲気で、母乳をあげている姿も神々しかった。それで、「おおー、子供もいいかもなあ」と思いました。

とても単純と言えば単純ですが、それが良かった。私のような頑固な人は、「産むべき」とか、「産んだほうがいいよ」と言われると反発してしまうんですけど、お母さんになった彼女との再会で自然に「子供もいいな」と思うことができて、本当に良かった。それから簡単な道のりではありませんでしたが、米国女性の20%は35歳以降に子どもを持つという米産婦人科学会(ACOG)のまとめたデータの一人になりました。

しかし、女性は本当に複雑な選択をしなくてはならないんですよね。妊娠出産は自分の体をはってやる大仕事なのに、その上に自己実現も、仕事も、育児と仕事の両立も、いろいろ考えないといけない。私もずーっと試行錯誤しています。