自宅勤務

本文とは直接関係ないですが、人気の絵本シリーズ 『ゆうたくんちのいばりいぬ』。
おとうさんのゆういちさんは、家族が寝静まった時間に、お酒臭い状態で帰宅したりします。
今のお父さんは違うかもしれませんが、私の父もそんなことよくありました。

Yahoo の CEO で、第1子を出産したばかりのマリッサ・メイヤーさんが、社内に「自宅勤務禁止令」を出したことで、かなり批判を受けてますCNN MoneyMercury News などにも記事が出てますね。社内に出された通達によると、今年6月からはオフィス出社が義務付けられるそうで、現在1万1,500人いるスタッフのうち何人がこれを実現できるのかわかりませんが、中には引っ越しや辞職ということになってしまう人もいるようです。

メイヤーさんの産休は2週間だったので、これにもかなり批判が出てましたが、彼女は自分のオフィスの横に自分でナーサリー(子供用の部屋)を自腹で作ったそうですし、そこにナニーさんでもついていれば子連れ出社・勤務もできますね(ま、それも子供が自分で動き、「マミー!」とか大声で叫びだすまででしょうが・・・)。でも、他の社員にはそういうオプションがないというのに、次のステップはこれか。21世紀ともなると、もっとフレキシブルでクリエイティブな働き方ができそうに思いますし、仕事の種類によってはオフィスにいないほうがはかどるものも多いと思うんですけど、これで仕事と育児の両立をしたい人や両立をしないといけない人、何らかの理由でずっと見てくれるナニーをつけられない人や預けられない人、でも才能ある人で自宅勤務なら貢献できる人が、もっとフレキシブルにしてくれる会社に行ってしまったりすると、元も子もないのでは。ま、確かにふとした会話でアイデアが生まれるってことはよくあり、顔をあわせて仕事するほうが話が早い場合も多いので、Google から来たメイヤーさんは、自宅勤務者がそういうチャンスを家にいて逃すケースを何度か経験し、Yahoo の業績回復という大きな責任もあって、こういう動きに出ざるをえなかったのではと想像します。

余談ですが、自宅勤務(テレコミュート)というのは、仕事の内容では十分にテレコミュートできるものだったとしても、人間全員がテレコミュートに向いてるわけではないですね。私自身は自宅を含むどこでも集中することができると思ってますし、うちの夫もそう。というか、立場的にやらないといけないし、他にチョイスがない。でも、どうしても家では集中できないとか、マルチタスクでないとか、長年にわたり「家は仕事以外のことをする場所」だったりすると、「やっぱり無理」な人もいるんですよね。

テレコミュートで仕事ができる人について、以前に社内で話し合ったことがありました。自立精神があり、自分をコントロールでき、相手の顔を見ない状態でのコミュニケーションが上手で(読み返さないと分からない文章力の人は無理~)、でもメールだけとか固執せず、最良のやり方でコミュニケーションができて(電話とかスカイプとか必要に応じて対応できる)、とにかく目の前のタスクでも機械 的にできるものは次々とクリアし、チーム内・社内での仕事の流れが分かっていて前倒しで仕事ができる人(自分のことはできても、自分の仕事に関係した仕事 をする人の事を考えて行動することがチャレンジになりますね)であれば、テレコミュートでも問題なしという結論だったと思います。でも、最初はテレコミュートが苦手でも、努力してできるようになる人もいます。それに、人や仕事でそれぞれ違いがあって、「顔をあわせるミーティングを増やしたら、もっとスムーズに仕事がで きるようになった」ということもあります。私も一つのやり方に固執せず、それぞれのやり方やニーズにできるだけ対応していく必要があると、ここ数年で学びました~。

で、私の場合、いざ子持ちになってみて、思うようにすいすい行かないことが多く、これからどのように働けばいいのか悩み始めていた時に、私のまわりの「仕事ができる、子持ちの女性たち」が、「私は他にチョイスがなかったけど、できることならできるだけ子供といたほうがいいよ。 もちろん、その人それぞれなんだけどね。確かにその間にキャリアの方はストップしてしまったりするかもしれないけど、二度とない時だから」とか、「そうい うもんだと思って最初から預けて仕事に戻ってしまったけど、今から考えたら最初こそ一緒にいながら仕事できたなとか思って後悔してる」と、心のうちを語ってくれたことが、一つの支えになりました。やっぱりすごい人たちもみんなそれぞれ悩んで乗り越えているのだ、と。

しかし、メイヤーさんのようなスーパーヒューマンな女性に大拍手を送る人もいるのが現実。私もかつてはそういうなんでもかんでもできる母を夢見、憧れたこと もありましたが、それはあくまでも自分への要求。うちは小さいから仕事ができる人ばかりだし、「できるだけフレキシブルに!」が良いと思っていたら、自分が2年前に出産してからはスタッフに育児も仕事もできるようフレキシブルにしてもらえて、とにかくありがたい。フレキシブルにしている私を見た社外の人に「自分がいなくても会社がまわるってことがわかった?」と意地悪なコメントを言われたこともありましたが、そうではなく、みんなで話し合って工夫してまわすようになったという、チームワークの話なんですよね。

なにしろ、自分が子持ちに なってみると、スーパーヒューマンになろうにも、体力面と精神面がついていかない!分身の術はできないし、実際のところ、子供との時間が欲しい!今まで 知らなかった、人間の小さな小さな成長を毎日できるだけ見ていたい。子供はどんどん成長して、いろーんな「初めて」を見逃したらもう二度と以前の状態に 戻ってくれませんしね。大きな成長のポイントとして、首がすわる、笑う、寝返りを打つ、はいはいする、離乳食になる、つかまり立ちする、歩く、そういったことが挙げられますが、その間にもいろーんな小さな変化があり、見てて楽しいし、子育てしている人にも感心しっぱなしです。

でも、そんなふうに子育てを楽しんでいる風だと、それが面白くない人も出てくるのが、また一つの現実のようです。子供を虐待したりする親のニュースや、不幸な状況の子供には、「ひどい親だ」「子供がかわいそう」と言うのに、楽しそうに子育てしている(かのように見える)人のことは面白くない。「自分の親が働きづめで苦労して自分を育て くれたおかげで今の自分がある」とか、「自分だって子育てそっちのけで働いて子供を育てて、ちっとも後悔してないし、子供だって立派に育ってる」とか、そういうふうに自負していたら余計に、「甘い!」とか言って、新しく親になった人にプレッシャーかけたりするんですよねー。実際のところ、初めての育児で楽しいことだけという人はそんなに多くないと思うんですが・・・。子供が幼いと、突然の誘いに乗れない。夫がいるのに、子供を置いて出かけられない(ことも多い)。何かするにも事前のアレンジが必要。育児ワークショップでも、「パッと思いつきで出かけたい」「今やりたいことを今やりたい」といったことができないことが、ストレスの原因として挙げられてたりしますね。私もそんなふうに子供優先の状況がまだ多い。それも夫婦・子供・家族などでそれぞれ違うのですが、「xx さんは子供を置いて来てたよ」とか変な比較をされると、疲れてる親はもっと疲れる。あのー、あっちの子供はもう小学生で、うちはまだ生後3ヶ月ですけど・・・とか言っても、そういう人には「子供」は「子供」だったりするので、もう言うのも嫌になる。そういう話もよく聞きます。そこで傷口に塩を塗りこむように、「以前は子供なんか欲しくないって言ってた」とか(確かに言ってましたが)、 「以前は特に子供が好きでもなかった」(今でも特に子供好きではないですが)とか、ちくちく言われると重荷だな。

でも、息子も2歳になり、預ける時間もできてきて、私のスケジュールもまた変わってきました。これからプリスクールに入り、キンダーに行って、学校に入ると、さらに変わっていきますね。大学時代からのある友人が、「"誰々さんがこうなってしまった" と、まるでもうそこでその人が終わってしまったように言ったり、勝手に嘆いたりする人がいるけど、人間は誰しも時間の流れの中で生きている。自分も変わるし、相手も変わる。ある時点で "誰々さんがこうなってしまった" と思っても、それも変化の一つ。これからまた変わるかもしれない、お互いの道が交差すればまた一緒の時間を楽しめるようになるかもしれない」と言っていたことを、たびたび思い出します。そんないろいろな変化の中で、友達づきあい をしていける人の存在が、新たな局面を迎えた自分の人生でありがたみを増してます。