『迷走する両立支援』

ちょっとピントがずれてしまいましたが、
街角で桜が咲いてました。
私の会社で昔、インターンとして働いてくれていた A さん。今は日本の大企業にお勤めですが、昨年出産し、今年に入ってから育児休暇を終えて、フルタイムの仕事に戻られてます。そのために育児休暇の前半から保育所を見つけ、後半には子供を保育所に預け、オンタイムに出社するための朝のルーティンを練習して、いざ本番となったらちゃんとルーティンをこなして、満員電車に揺られて会社に行って一日働いて、子供を迎えに行って帰宅してご飯を作って、子供をお風呂に入れて添い寝までして、夜鳴きしてても聞こえないぐらい疲れてる。そんな彼女の日々の奮闘を Facebook で読んでると、素直に「えらいなあ~!」「すごいなあ~!」と思います。

そういうこともあって、日本ではどういう子育て支援のシステムがあるんだろうと不思議になりました。妊娠出産関係の雑誌は母親向けという感じですし、イクメンという言葉が生まれるのはお父さんの子育てにおける存在が希薄な場合が多いからという印象もありました。

私の親の世代(今60代)では「男が出産に立ち会えるか!」「一日外で働いて疲れて帰ってきた俺が子供の世話なんかできるか!」なんていう男性が多かったと言われますが(今でもこういう男性はいるらしいですし、さらにそういう思考の男性を賛美する女性もいるらしいですが、かなり謎の存在かも)、私の父親は「とにかく私の母親を信頼しておまかせしていた」と言うものの、実際は保育所で熱を出した私を勤務中に迎えに行って、抱っこ紐で背負って仕事を続けるなんてことを普通にやっていたらしいですし、私が物心ついてからも「父親不在」という記憶はまったくなし。そんなふうに家族でひとつになってがんばってるお父さんもツイッターではよくお見かけします。

そして、いろいろ検索していて行き当たったのが、この 『迷走する両立支援』。「子供にベストのものを与えたい」(物や金を与えまくって甘やかすという意味ではありません)と思うのが親。しかし、これを読んでみると、日本のシステムはかなりお粗末で、親はいろいろ苦労してるようです(もちろん、シアトルの親が苦労してないわけではないですが・・・)。

著者の萩原さんはいいことをいろいろ言っておられます。その中で特に目についたのが、これ。

「私は逆にこういった複雑な問題に対して、「これが正しい正解です」ということが逆に問題をもっと複雑にし、悩んでいる人たちを追い詰めると思っているんです。」

「「悩まないで、明るく子育てを」なんて本当の意味ではできない。そうだと思いませんか?だって、学生時代だって悩んだでしょ。子供がいないときだって悩んだはずですよ。で、子供を持った瞬間、明るくいきいき子育てをなんてことはないです。あまりにも今の社会のあり方に決定づけられているものがあって、その悩みはだからこそ本当に大事にしていただきたいし、悩む意味があるというふうに思っています。」

ほんとそうです。これは社会のシステムだけでなく、個人レベルでも言えると思います。先日も2児の親である知人が言ってましたが、「"子供がいるから幸せだよね" って、子供のいない人に言われるけど、そんな単純なもんじゃないと思うんですよね。」

そうですよねえ。子育ての状況にもいろいろありますし。私も子育てが始まった時、ちょっとでも大変だ、疲れた、と言おうものなら、複数の人から「でも、楽しいでしょう?」と即座に返され、大変だと言ったり思ったりしてはいけないような、そんなふうな変なプレッシャーを感じたりしました。英語でも "Look at the bright side"(プラス思考で行こう)とは言いますが、大変だと思ったり、感じたりする、そういう自然な感情をすべてネガティブと捉えて我慢したり否定したりする必要はないと思うんですよね。ま、子育てに限らず、大変だ大変だと、だらだら同じ話をされるのはたまったもんじゃないですが。

私が出産した病院では生後0-3ヶ月の子供を持つ母親に無料でクラスを提供しているんですが、そのクラスは毎回、「こうしてクラスに来てるということ、それが本当にすばらしい」という、インストラクターの励ましで始まりました。寝不足で疲れてるし、初めての子育てで戸惑いも不安もあるし、さらに新生児と外出することへの恐怖や不安もある。もっとうまくできるんじゃないか、もっといいようにできるんじゃないか、もっと改善するべきところがあるんじゃないか、そういった思いがあるからこそクラスに来てるわけで。ま、これは個人差がありますが、A さんがそうじゃないからといって、そういう状態の B さんを否定したり批判したりするのはおかしいですよね。そういったことをすべてわかってるインストラクターは、「大丈夫よ、あなたはちゃんとやってるわ」「それでいいのよ、でももし別のやり方でやりたかったら、こういうこともしてみたらいいかもね」と、不安なお母さんたちを肯定して、指導してくれました。とてもありがたく、がんばろう~という気持ちがわいてきました。